日本酒と同じ手造りの製麹法で発酵させた個性光る甘酒

甘酒には「酒」とついていることからアルコール入りと思われることもありますが、米麹の甘酒はノンアルコールなんです。

栄養価の高さから、 “飲む点滴”といわれるほど古くから重宝されてきた日本が誇るノンアルコール発酵飲料。

ビタミン、ミネラルが豊富で私たちの体を動かすのに必要な9種類の必須アミノ酸が含まれている。

手軽にコンビニでも買えることから今では身近なものになっています。

栄養価が高い甘酒は健康にいいことはもちろん、ダイエットや美肌・美髪、便秘解消、疲労回復などうれしい効果が期待できるミラクルな飲み物です。

甘酒には、酒粕から作られているものと米麹からできているものの2種類があり、米麹の甘酒はノンアルコールだから、子どもにも妊婦さんにもオススメ。

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1次産業の視点から造りだす加工業

「個性を引き出し、バランスを取ることが杜氏の仕事です」。

そう話すのは杜氏の橋本晃明さん。

「美吉野醸造」の酒造りの特徴は今までの酒造りでは語ることができない“酸と旨みが響きあう酒造り”を目指している。

「美吉野醸造」で酒造りをしていく中で“「美吉野醸造」の商品はどういうものか”を模索している中、“酸味”というキーワードが出てきた。

時代ごとにある日本酒ブームに合わせて酒造りをする中、お米のブランド力に“おんぶにだっこ”状態で「このお米を使っているからおいしいですよね」という表現方法をしてきたときもあれば、吟醸ブーム時には、お米を磨いていくことによって味のおいしさを表現する方法をとっていた。

しかし、2010年。

これまでの表現方法を一新する、価値観が変わるようになる。

それは、地域農業との連携の基で酒造りを行う形ができたことだ。

「美吉野醸造」では吉野杉の木桶を使っている。

その木桶仕込みの復活プロジェクトと農業との接点が生まれて、加工業の視点からでしか1次産業を見ていなかったが、中から外を見るようになった感じで、目線が一気に1次産業よりになった。

農業や林業はその地域に根差さないといけない。

地域を解釈して理解していないと、農業法や林業法が生まれなかった。

地域を見ながらやってきた業態のなかに加工業というものがある。

それまではどちらかというと“いいものだけを仕入れて、いいものだけを売る”という価値観だった。

でもそうあるべきではなくて、加工業として“いろんなものができたときに、醸造を使って安定させる”という解釈を持たなければいけないと考えるようになった。

今「美吉野醸造」では、契約栽培の作ってもらったお米の全量買い取りすることによって無駄なく使いきっている。

ただ、そうするとお酒だけで使うことは難しいお米もでてきてしまう。

そこで、契約している農家さんに「これ以上必要ない」と言わなくてもいいように、『酒蔵古流こうじ甘酒』の商品を持つようになった。

甘酒を本格的に造るきっかけになったのは、倒れたお米ができた2017年。

規格外になってしまったお米には等級がつかない。

そこで、それらを甘酒に回し始めた。

その後コロナ禍になり、“飲む点滴”ともいわれる甘酒は一時期、定番の日本酒を超えるほどの人気商品となった。

 

地域に寄り添うからこそ染み出てくる味。出てしまっている個性。

橋本さんは東京農業大学で酒造りの勉強をした後、修行先での経験で酒造りには多様性があると実感しておもしろさを感じたのだとか。

大学では“この酵母菌がいたらいいお酒ができる”というアプローチの仕方で、この酵母菌・お米・精米歩合で造れば、こういう味ができて一定の“おいしい”に向かって造りこんでいく。

でも修行先では全く違う方法でおいしさにアプローチしていた。

修行先の蔵の考えに基づいて“おいしい”を造っていて、そのどれも味が異なる。

私たちが考えているおいしさだけではなくて、蔵の数だけおいしさがあることに気付き、吉野で醸していくとどういう味になるのかということが楽しみになり、酒造りのおもしろさに気付いた。

さまざまなお米や気候、吉野という地域に対応するためには温度管理をすることが“おいしい”にアプローチする簡単な方法かもしれない。

酵母菌というものを1つ決めてしまうと、その酵母菌を生かして酒造りをしなければいけない。

そのためにはその酵母菌を育てる環境を整えてあげないといけない。

つまり、その地域の環境を変えて、その酵母菌に合わせた環境を作ってあげる必要がある。

しかし合わせすぎるとそれは“吉野の環境なのか”という疑問が湧く。

他の地域でも、この酵母菌に合わせているから、結局別の地域なのにも関わらず同じ環境を作ってしまっていることと同様なことではないかと。

そうすると「美吉野醸造」が考えるお酒の多様性から離れていってしまうことになる。

温度管理をして環境を整えれば決めたおいしさには近づく。

しかしその方法ではこの地域らしさは反映しにくいと感じた。

お米の味をしっかり出し切ったお酒は濃度が濃い。

弱い酵母菌では耐えられない、強い酵母菌である必要がある。

それでたどり着いたのが、野生の菌だった。

野生、つまり自然だから目的の味にはならないかもしれない。

でも“このおいしさ”があれば“こっちのおいしさ”もあるという解釈を持つようになってからは、全く酵母菌を使わない蔵になった。

「みなさんが知らない味である場合が多い。“これは何なのか”と、おいしく楽しんでもらえるような見せ方とか提案の仕方とかやっていかないといけない」。

「染み出てしまった個性を感じた時にお酒を飲む意味がある」と橋本さんは言う。

「キレイな景色を見た時と同じで『うわーすごいなー』ってぽろっと口から思わず出てしまっていた経験ないですか?何がすごいかわからないけれど、『この景色が好き』って感じることと一緒で、うちのお酒を飲んだときにもそういう風に感じてもらえたらうれしい」。

『酒蔵古流こうじ甘酒』の特徴は麹。

花巴の日本酒と同じ考えで造っているから、日本酒に使う「総破精(そうはぜ)こうじ」。

箱麹という方法で、手作りの麹を使っている。

50年間大切に使用している吉野杉の麹室を生かしたクラシックな製法。

その麹を使った『酒蔵古流こうじ甘酒』は他の甘酒の味とは違っている。

日本酒の製造では、一般的に糖化させやすい麹を使ったり、酵素剤を使ってあまり米の旨味を出さないようにしていたり、または吟醸酒など雑味を抑えたお酒を造る際に用いる突破精(つきはぜ)麹であまり米に繁殖しない麹を使っていたり。

一方「美吉野醸造」では総破精麹を使ってたっぷりと米に繁殖させている。

その中でもデンプンの糖化度を上げるために製法を工夫している。

クラシックな製法だけれど、味は斬新でおもしろく仕上がっているのは、総破精麴の製法との酵素バランスで表現されているからだ。

麹箱も麹室もすべてに緻密な年輪で色が出にくく、香りが穏やかな吉野杉を使用。

木材には調湿効果がある。

空気が乾燥する時期は、木の中の水分が空気中に放出され、乾燥を防ぎ、湿気が多い時期は、木材が空気中の水分を吸ってくれるので、湿気を緩和することができる。

麴室には一般的な断熱剤を入れるのではなく、もみ殻を利用し断熱効果を持たせている。

そういう麹室では総破精麴が作りやすい。

甘酒はお米と麹と水を入れて55度ぐらいで一定に保ち放置して丸1日でできる。

麹の持っている酵素が、米のもっているでんぷんを糖分に変えるので甘くなっていく。

あまりつぶしすぎずに、ゆっくりと溶かしていく方法をとっていくから粒は残った状態になるけれども、自然な甘さが出てくる。

「栗とか芋みたいな香ばしさみたいな感じが出て、コクが深い。味が甘いだけではなくて味に深みがある甘酒です」と橋本さんは教えてくれた。

取材担当からのコメント

中村真奈美

もともと「美吉野醸造」で醸された「花巴」のファンだったけれど、あらためて取材させていただいて、常に新しい見方をして進化し続けている「美吉野醸造」がさらに好きになりました!『あまざけ』は他の甘酒に比べたら、自然の優しい甘みを感じる。そしてお米の旨みがじゅわーっと口の中を刺激する。「うまっ…」。

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奈良県吉野郡吉野町美吉野醸造株式会社

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