シンプルテイストの野菜&果物クラフトビール

ビールが苦手な人でも飲みやすい独特な爽やかさ、オシャレなボトル……。

瞬く間に一世を風靡したクラフトビールは、ビール好きなら一度は飲んでみたことがあるだろう。

しかしその熱も少し落ち着き、いまでは超大手メーカーがなんとか生き残っている。それほどクラフトビール市場は厳しいのだ。

そんな中で、仕込みから製造、瓶詰めまですべて手作業、しかも1人で行っているクラフトビールがある。

千葉県柏市にある「柏ブルワリー」の『柏エール』だ。

厨房に入ると、グツグツと煮える寸胴鍋と1人向き合っている姿があった。

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手造りにこだわったシンプルな味わい

どこか懐かしい、甘い香り。

甘ったるさはなく、すぅっと体を通り抜けていくような透明な甘さ。

まるで酒粕のような、優しい甘い香りに包まれた厨房で作られているのは、千葉県産の特産物を使用した『柏エール』だ。

ビール工場と言えば、とてつもなく大きな銀色の樽や、張り巡らされたパイプ設備。整えられたラインで製造しているイメージがあった。

『柏エール』はつくり手である梅﨑 勝さんが1人で企画・開発、製造販売を続けており、その厨房はいわゆる“居酒屋の厨房”くらいの広さだ。

使用している樽も大きな寸胴鍋と、大人が覗き込めそうな高さの樽のみ。

大きめの寸胴鍋にポリタンクへ汲んだ75度のお湯を投入する。何度も往復して寸胴鍋をお湯で満たしていく。その作業だけでもこれから始まるビール造りが重労働であることが窺える。

『柏エール』には味が6種類ある。

米、生姜、蕪、梨、ピーナッツ、コーヒーだ。

それぞれの味わいや作りたいイメージに合わせて、3種類の麦芽をブレンドして『柏エール』は作られている。

セレクトした麦芽を、寸胴鍋にどっさりと投入。

大きな柄杓でかき混ぜると、残り香だった甘い香りは、輝きを取り戻すように鮮明な“今”の香りとなって、厨房を満たしていった。

残り香の正体は、麦芽を煮た香りだったのだ。

麦芽を投入することで下がった温度を、1時間近く火にかけてゆっくりと75度に戻していく。

じっくり。じっくり。焦らない。

濾過すると、濃い黄金色をした甘い香りいっぱいの麦汁が完成した。

これがいわゆる“1番絞り”だ。

1番絞りがすべて出きったら、さらに上から75度のお湯だけを足してそのまま濾過を続ける。

ここからは2番絞りだ。

2番絞りが混ざっても、お出汁のように芳醇な香りは健在。そこで思わず試飲をお願いしてしまった。

できたての麦汁。

いざ飲んでみると、香りからイメージしていたほど濃い味ではなく、すっきりと飲みやすい。

梅﨑さんの言う「濃い麦茶みたいですよ」に納得するような味わいだ。

濾過された麦汁に香りづけのホップを投入。

6種類の味となる米や蕪なども加え、さらに30分ほど煮込む。

その後冷却され、ビール酵母を投入することで、麦汁はビールへと変身を遂げるのだ。

『柏エール』は主発酵に4~7日、その後詰めた瓶の中で二次発酵が進む。

すぐに飲めば甘く、時間が経つほどに爽やかさが立っていく。

自分好みの開栓タイミングを見つけるのも『柏エール』の楽しみ方だ。

千葉県で採れたものを使いたい

『柏エール』は千葉県柏市で採れた米、かぶ、生姜という3つの味からスタートした。

なかでも柏市の小かぶは柏の三大野菜と言われ、柏市を代表する野菜のひとつとして地元市民をはじめ、全国で愛されている。

「千葉と言えば?」という質問に高確率で返ってくるピーナッツ、そして柏三大フルーツの梨も『柏エール』で味わえる。

それぞれの味わいや風味を活かしながら、目指したのは“クセのないクラフトビール”だという。

「ほとんどのクラフトビールは、いろんなものが入っていて味がとても複雑。それも美味しいけれど、僕はそうではないものを作りたかったんです。千葉県の特産物の風味がふわりと感じるクラフトビールにしたかった」と、梅﨑さん。

『柏エール』はいわゆるクラフトビール感のないクラフトビールなのだ。いい意味で。

開発・販売から5年以上経ち、現在では柏市を中心としてコンビニやスーパーなどでも目にすることができる。

令和元年には千葉県のマスコットキャラクターであるチーバくんパッケージの『チーバくんエール』も誕生。

TVなどのマスコミに取り上げられることも増え、柏ブルワリーの手作りクラフトビールは日本全国で人気となっている。

生産が追い付かないくらい注文が入り、てんやわんやになることもあるという。

しかし自分でできることは自分でしたいという梅﨑さんの思いは強い。

手造りにこだわり、瓶詰めやラベル貼りまで自身で行い、お客さまへの感謝を込めながら発送している。

優しい眼差しで穏やかな人柄の梅﨑さん。

しかしその人生は波乱万丈だった。さまざまな業種の販売業を経験したのちに飲食業界へ入り、脱サラして34歳で自分の店を持った。

苦労という言葉では足りないほど努力し、逆境でこそ持ち前のアイデア力を発揮してきた結果である。

『柏エール』の開発当初、資金面で苦しいときは、あるものや手に入れられるもので工夫した。現在も使っている『柏エール』を作っている樽は、専用品ではなく自分で寸胴などをDIYしたものだというから驚きだ。

最新鋭の設備に投資するのではなく、自分の腕を磨いてアナログながらも味わい深いクラフトビールを完成させた。

とことん自分に厳しいが、周囲への優しさは眼差しだけではない。

「千葉県産にこだわって、何でもいいから千葉に還ってくるような仕組みを願っている」。

お金、人材、文化、伝統。

さまざまな要素が詰まって、地元の柏市や千葉県を活気づけたい思いから生まれたのが柏ブルワリーの『柏エール』なのだ。

取材担当からのコメント

いずたに

『柏エール』がこだわったすっきりとしたクセのない味わい。一般的なクラフトビールはどんなに暑くて喉を潤したくても2口と飲めない私ですが、『柏エール』は大丈夫!試飲させてもらった麦汁ののど越しをそのままに、それぞれの味が追加されているので、その風味がけっこうダイレクトに来ます。お好みの味を見つけてくださいね。

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千葉県柏市柏ブルワリー 本店

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