地元産100%の米と水で醸す酒

きっかけは村おこし。

旧谷和原村(現つくばみらい市)は、「谷原三万石」と呼ばれる米どころとして知られていました。

いい酒米を作る環境はあっても、酒蔵がないため特産品に酒がありません。

そこで隣町の酒蔵に話を持ちかけ誕生したのが、地元米100%、米の香りがほのかに立つ「やわら三万石」でした。

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良質な酒米と水で酒造り

谷原三万石と呼ばれていた旧谷和原村の田んぼ

酒蔵のある水海道と旧谷原村は小貝川を挟んで隣同士。

川沿いに広がる田園風景は、江戸時代初めに幕府代官の伊奈忠治によって開発された美田で、「谷原三万石」と呼ばれる米どころとして知られていました。

「旧谷和原村の人たちが愛してくれる商品をどう提供するか。地域の名産品を作りたいという思いにどれだけ寄り添えるかを考えました」。

相談を受けた当時を振り返るのは竹村酒造代表の竹村亥一郎さん。

商品開発当初の思いを語る社長の竹村亥一郎さん

「特産品として酒を作るなら、谷和原産100%の酒米を作る必要があります。この辺りでもいい酒米になるという実績があって、なおかつ農家さんが作っているコシヒカリと一緒に育てることのできる酒米を提案しました」。

酒米として使用することになったのは「五百万石」。

いい米になるということは、この辺の気候に合っていて作りやすいということ。

コシヒカリと刈り取る時期が近いので、鳥害を受けにくいことも選定理由の一つでした。

川の水を灌漑用水に引く福岡堰付近の小貝川

美田を育む小貝川の水はまた、醸造にも向いているといいます。

小貝川は急流ではなくゆっくり流れる川。

川底には砂や泥が多く、これが地中に水が染み込む時の厚いフィルターの役割を果たします。

そのため井戸から汲み上げられるのは、きれいでミネラル分のバランスがいい水。

これが、酒造りに欠かせない「仕込み水」になります。

竹村酒造が長年酒造りに使用してきた水です。

純米酒「やわら三万石」ができるまで

契約農家から納入されたつくばみらい市産の酒米「五百万石」

まずは村の中で消費できる量の酒米を生産するところからスタート。

その後徐々に、村のPRとして外に出せる分を醸造できるよう増やして行くことになりました。

現在は約5000L分の酒ができる量の酒米が毎年納入されています。

納入された酒米「五百万石」の玄米

納入された酒米は、「磨き」という工程で丸く精米され仕込みに使用されます。

粒の中心(心白)はデンプン質。

周りに行けば行くほどタンパク質が増え、これが雑味のもとに。

「やわら三万石」の酒米は、45%近く削り、55%ほどを使用しているそうです。

酒造りのこだわりや手間は、磨き具合だけではありません。

例えばタンクから絞るときの絞り具合。

めいいっぱい絞ればその分余計なものが入りやすくなります。

アルコールの発酵具合も、一気に上げずに緩やかな方がまろやかに。

火入れの機械。酵素の働きを止めて酒質を安定させ、殺菌する役割がある

やわら三万石は原酒で18%くらいまでのアルコール度数に抑えて醸造。

雑味が出ないように温度管理を行っているそうです。

そして、濾過や割り水、火入れなどを経て、ようやく商品になります。

酒を保管しているタンク

原料の発酵条件が酒蔵の気候に合っているかも、酒の味わいを左右するといいます。

地域の気候、原料、発酵、かける手間、それぞれの組み合わせでつくり出される、酒蔵独自の味。

やわら三万石は純米酒。

特徴を伺うと、竹村さんは「飲む人の感じ方がすべて」と言いつつも、次のように話してくれました。

「米の味がしっかりあって、香りもほのかにするお酒です。常温か少し冷やして飲むのがおすすめ。好きなように楽しんでいただけたらいいのですが、強いて言うなら、赤身のお魚やサッパリ系のお肉に合う味だと思います」。

気に入ったらぜひ変化も楽しんで

販売開始から約25年経ち、変わらず一定数売れているということは、この酒を好んでリピートする人がいる証。

店舗にわざわざ「やわら三万石」を買いにくる人もいるそうです。

「お米の出来がよくて作りやすい年もあれば、逆に製法を工夫して質を落とさないよう対応した年もあります。それがこの商品の難しいところではありますが、だからこそ、地元の人に愛着を持っていただけるのだと思っています」。

できた米の味わいで、酒の風味が変わるのは当たり前。そんな変化もぜひ楽しんでほしいと竹村さん。

貯蔵庫に保管されている年代物の酒が入った甕

また、日本酒もワインのようにきちんと温度管理をして保管すれば、エイジングを楽しむこともできるといいます。

「上手に歳をとらせることは決して悪いことではないんです。酒蔵でも時々古いものを限定で出すことがあります。ぜひいろいろな楽しみ方で飲んでみてください」。

地元産100%、地域に愛されるこの地酒。ぜひ市外県外の方も、谷和原の田園風景を思い浮かべながら飲んでもらいたい一本です。

 

取材担当からのコメント

北織麻美

同じく街おこしで考えられた商品には、長く残るものと、そうでないものがあったそうです。「やわら三万石」は、この地の歴史と風土に沿った商品だからこそ、原料の生産者、つくり手、消費者、それぞれにとって愛着のある商品になったのだと思いました。私も自宅で飲んでみましたが、たしかにふわっと香りの余韻が。一面に広がる黄金色の田んぼを思い浮かべて飲むと、よりお米の味が感じられる気がしました。お刺身や醤油漬けいくらなどの和食によく合いました。

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茨城県常総市株式会社竹村酒造店

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